10CCのアルバムの中でもっとも人気が高く、最高傑作と呼ぶにふさわしい驚異の完成度を誇るアルバムが、この「オリジナル.サウンドトラック」です。オリジナル.サウンドトラックと言っても、何かの映画サントラ盤ではなく、メンバー自身の構想から生れた架空のサントラという設定になっており、収録されている全8曲すべてから銀幕に写し出される映像のワンシーンを、聴き手側が
感じとることができる仕掛けになっている作品です。
まず、アルバム1曲目を飾る8分を越える組曲形式による大作"Une Nuit A Paris"は、パリを訪れた旅行者の一夜を緻密なサウンドとアイデアにより見事に表現した導入部としての役割を担う上で、重要な1曲に位置付けられる楽曲です。
同じように物語りの最後を飾るラストシーンの意味合いが込められている曲が"The Film Of My Life"で、とてもロックアルバムに収められているとは思えないような、カンツォーネっぽい雰囲気漂うノスタルジックなナンバーで、物語りは終焉を迎えるという構成になっています。
他にも、いかにも10CCらしい独特でへんてこりんな高揚感が面白い、ギンギンのハードロック風ナンバー"The Secound Sitting For The Last Supper"(2度目の最後の晩餐)、スライドギタープレイが光る "Black Mail"(ゆすり)など、耳に残る印象的サウンドの宝庫のような楽曲が並ぶ中...、
やっぱり本作でいちばんのハイライトは、永遠の名曲"I'm Not In Love"でしょう!1975年の夏、全米ビルボードシングルチャートにおいて第2位まで昇る大ヒットとなった10CC最大のヒット曲です。
その美しいメロディーラインに加え、当時のスタジオ技術では考えられないほどのオーバーダビングによる重厚なコーラスパートには、ただただ圧倒されるばかりです! その驚愕の洪水音は、どのような行程で制作され完成したか?
当時の音楽クリエーターや、耳の肥えたファンの間で論議がなされたくらいに凄い代物でした。サンプリング技術などまったく無かった70年代中期に、この驚異のサウンドはやはり奇跡としか言い様がありません!
その後、10CCは翌年「How Dare You」(びっくり電話)を発表するも、技術的テクノロジー面を支えてきたケビン.ゴドレイ&ロル.クレームの2人が脱退し、新たにゴドレイ&クレイムを結成、"ギズモ"なるギターアタッチメントの開発に勤しみ、実験的サウンドを追求した作品を次々に発表していく事となります。
一方、残された2人エリック.スチュアート&グラハム.グールドマンにより10CCは活動を続けていき、ゴドレイ&クレームがいた頃の毒気はまったく薄れてしまったものの、正当派ポップの流れを汲んだ数々の良質な作品を、以降 残してくれました。
つまり、10CCは5CCづつに分裂してしまったのです...。誠に残念、この4人のポテンシャルを維持したまま、もう2~3枚はアルバムを発表して欲しかったものです。
〈アーティスト〉10CC / 10CC
〈アルバム.タイトル〉
THE ORIGINAL SOUNDTRACK / オリジナル.サウンドトラック
〈リリース/レーベル〉1975/MERCURY