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坂本龍馬暗殺犯は誰か!新選組と見廻組説

坂本龍馬が暗殺された直前の近江屋には、龍馬と中岡慎太郎、下僕の藤吉、近江屋の主人夫婦と使用人がいました。龍馬と慎太郎は2階に、藤吉と近江屋の関係者は1階に居たとされています。2階の部屋には書生らしき人物が数人いたという資料も存在しますが確証はありません。


通説では、夜の8時から10時の間に十津川郷士を名乗る数名の者が近江屋を訪ね、名札を渡し龍馬に面会を求めてきました。1階にいた下僕の藤吉が戸をあけ応対し、2階にいる龍馬に名札を渡します。龍馬は渡された名札を見て、知らない名前だが親交のある十津川藩の郷士ということもあって2階に通すよう藤吉に命じます。


2階に案内する藤吉に刺客が襲い掛かります。藤吉は斬られうめき声をあげ倒れ込みます。そのときの物音を聴いた龍馬は、「ほたえな!」と叱責します。「ほたえな!」は騒ぐなという意味の方言だそうです。


藤吉を斬った刺客は、龍馬と慎太郎のいる部屋に向かい、名札をみていた龍馬と慎太郎めがけ襲い掛かります。このとき刺客は「こなくそ」と叫びながら斬りかかってきたと慎太郎が証言しています。


龍馬は頭部に一太刀斬りつけられ、そばにおいてあった刀を取ろうと後ろ向きになったところ、右側から腹部を斬られます。さらに刺客は手を抜くことなく上段から剣を振り下ろします。刀を手に取った龍馬は刺客の剣を鞘で受け止めますが、剣の勢いが強く鞘ごと削りとられ頭部に致命傷を負います。脳しょうの一部が飛び散るほどの重症を負った龍馬は間もなく絶命します。


一方、慎太郎は刺客の剣を短刀で受け止め応戦しますが、全身20箇所以上に負傷を負い瀕死の状態になります。慎太郎に止めを刺そうとしたところ刺客のひとりが「もうよい」といってその場を立ち去ります。


慎太郎は深手を負い、特に右側の手は皮一枚でつながっていた状態でした。それでも17日まで生きていた慎太郎は苦しい息の中で刺客に襲われた状況を駆けつけた仲間に話します。この慎太郎の証言がもとでふたりが襲われたときの様子が記録として残されることになります。


■新選組犯行説

事件当初は、現場に残されていた下駄と鞘から新選組の犯行が有力視されていました。元新選組隊士で高台寺党の伊東甲子太郎とそのメンバーが遺留品の鞘が新選組の原田左之助のものであると証言したからです。


ただし、伊東と新選組は対立していたためその証言を鵜呑みにすることはできません。幕府の指名手配犯である龍馬を殺したのであれば、立派な手柄であり隠す必要もないとの見方から、現在では新選組犯行説は少数派となっています。


■見廻組犯行説

〇今井信郎の証言
現在、有力視されているのがこの見廻組説です。見廻組の隊員であった今井信郎は、戊辰戦争、函館戦争に参加した後降伏をします。1870年に東京へ送還され取調べを受けますが、自分が坂本龍馬を殺害したメンバーの一員であると自供しました。


今井の供述によると、かねてから龍馬を要注意人物とみていた見廻組が、龍馬が近江屋に滞在しているとの情報をききつけ襲撃を決行!襲撃メンバーは、佐々木只三郎、今井信郎、渡辺吉太郎、桂隼之助、高橋安次郎の他2名、計7名。佐々木、渡辺、桂、高橋の4名が龍馬と慎太郎を殺害、今井ら3名は1階で見張り役をしたとのことです。


ただし、今井以外の人物は、取調べ当時全員戦死していたので、供述の裏をとることはできませんでした。直接手をくだした実行犯ではなく、見張り役だったことから極刑をまぬがれた今井は禁固刑となり服役します。


さらに今井は、1897年に新聞記者に対し、「自分は見張り役ではなく龍馬を殺害した実行犯」だったことを告白します。そして、メンバーの中のひとりはまだ生きているとも証言をしました。


1911年、龍馬暗殺に関して新たな証言がでます!元見廻組の渡辺篤が龍馬を襲撃したのは自分であると証言したのです。渡辺篤の供述によると、龍馬と慎太郎を襲ったのは、佐々木只三郎、渡辺篤、今井信郎、世良敏郎の4人であり、その他に、見張り役がいたことを証言しました。


この渡辺篤の証言により、今井信郎が言った「まだ生きている人」とは渡辺篤だったことが推測できます。渡辺篤は、犯行現場に鞘を忘れたのは実行犯の世良敏郎であったとも証言しています。


この渡辺篤の証言は売名行為と見なされ、信憑性がないものとしてあまり重要視されなかったのですが、後に世良敏郎なる人物が見廻組に在籍していた実在の人物であったことが確認されたため、俄然注目されるようになりました。鞘が世良敏郎のものであることが確認されれば、実行犯しか知らない「秘密の暴露」になります。


この他にも薩摩藩説や後藤象二郎説などがありますが、どれも決定打にかける部分があり、消去法でいくと見廻組説が有力となっています。