爪水虫(つめみずむし)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「水虫は知っているけど爪水虫は聞いたことがないよ!」という方がほとんどだと思います。字をみれば何となくわかりますよね
爪水虫とは、爪に発症する水虫です。水虫は白癬菌に感染することで起こります。この白癬菌が爪と皮膚の間に入り込み繁殖することで爪水虫になるのです。
爪水虫の原因となる白癬菌は、ケラチンを餌にして繁殖します。ケラチンは18種類のアミノ酸が結合した繊維タンパク質ですが、このケラチンが豊富にある場所が私たちの皮膚の角質層という部分です。
角質層は、人間の皮膚の一番上(表面)にある層ですが、この角質層を構成している主成分がケラチンなのです。そして、角質層が最も厚い部分が足の裏と手のひらです。つまり、足と手は白癬菌の餌となるケラチンが豊富なため、水虫に感染しやすい箇所ということになります。
また、髪の毛や爪の主成分もケラチンです。実に髪の毛の99%はケラチンで構成されています。したがって爪や髪の毛も白癬菌が繁殖しやすい場所ということになります。
水虫というと足の指にできるというイメージがあると思います。薬局の店頭に水虫に感染した足の指の写真が貼ってありましたよね。確かに足の指は水虫の感染が非常に多い場所なのですが、足だけでなく手も水虫に感染します。
先ほど説明した通り、手のひらは角質層が厚いので白癬菌の餌となるケラチンが豊富にあります。手のひらや指が白癬菌に感染すれば手の水虫になりますし、手の爪と皮膚の間に白癬菌が入り込めば手の爪水虫になるのです。
一般的に水虫の症状といえば「痒み」です。かゆみの他に水疱やじくじくする、皮膚がふやけた状態になる、赤くなるなどの症状が現れます。しかし、爪には神経がないので水虫特有の症状である痒みを感じることができません。
そのため、爪水虫は初期段階での発見が難しく、気づいたときには悪化しているケースが多いのです。発見が遅れるということは、他の人にうつす確率も高くなります。家族の中に爪水虫に感染している人がいるときは、他の家族も感染していないか検査を受ける必要があります。
痒みを感じない爪水虫ですが、爪の状態を見ることで感染しているかの判断ができます。爪が割れる、爪がきれいにはえそろわない、爪の形がいびつ、爪の表面に筋ができる、爪が厚くなる、爪の色が白濁している、爪の周辺の皮膚に炎症がある、爪の周辺に痛みがある。
以上のような症状がみられる場合、爪水虫に感染している可能性があるので、皮膚科で検査を受けるようにしてください。
爪水虫になった人はどこで感染したのでしょうか?爪水虫の原因となる白癬菌は皮膚の角質層の中にいます。わたしたちの皮膚では、新しい細胞が日々誕生しています。新しい細胞が誕生すると古い細胞がはがれおちます。
これをターンオーバーと呼んでいます。ターンオーバーの周期は一般的に28日と言われていますが、28日ごとにすべての細胞が一斉にはがれおちる訳ではありません。ひとつひとつの細胞は誕生した日が違うので、細胞は毎日剥がれ落ちているのです。
この剥がれ落ちた細胞の中に白癬菌が潜んでいます。白癬菌に感染した人がいる家庭では、畳や床など家中のいたるところに白癬菌が潜んでいるのです。
家の中でも特に感染源となっている場所がバスマットです。白癬菌に感染した人が使用したバスマットで足をふくと、足の裏に白癬菌が感染して水虫を発症します。足の爪と皮膚の間に白癬菌が入れば足の爪水虫になるのです。
また、爪の手入れをするときにも注意が必要です。日本人の多くは爪の手入れに爪切りを使用します。爪切りは家族で共有することが多いので、爪水虫に感染する可能性が高くなります。
爪切りで切り取った爪の中に白癬菌がいた場合、爪のケラチンを餌にして数か月は生き延びるといわれています。床に落ちた爪を足の裏で踏んだ場合、足が白癬菌に感染することもあります。
「わたしの家には水虫に感染した人がいないから安心」と思っている方!本当にそうでしょうか?確かに水虫の感染源は家族というケースが多いのですが、家族以外からうつされることも多々あります。
お風呂や温泉のバスマット、プールに敷かれている吸水マットやスノコなど、裸足になる場所では感染する確率が高くなりますが、白癬菌の感染力はそれほど強くないので、清潔なタオルで足を拭いて、よく乾かしてから靴下を履くようすれば問題ありせん。
時々「足湯に入ったら水虫をうつされた」という人がいるのですが、これは間違いです。足湯に入ったからといって水虫に感染することはありません。問題なのは、足湯ではなく足湯からでた後のマットや床です。なので、足湯から出たら自分のタオルで足をしっかり拭いて、よく乾かしてから靴下を履くようにすれば水虫に感染する確率はだいぶ低くなります。
爪水虫や水虫に感染しないようにするには清潔を心がけることです。白癬菌が繁殖しやすい足の裏やてのひら、指、爪を清潔にすれば白癬菌は繁殖できません。
白癬菌は高温多湿の場所を好みます。特に足は靴や靴下を履くため常時蒸れている状態です。
自宅に帰ったら、お風呂に入り、蒸れた足を洗い清潔な状態にしてください。
お風呂に入ったときは、足の裏や指の間、指先、爪などを丁寧に洗うようにしましょう。家族の中に水虫に感染している人がいる場合は、一日一回は足を洗うようにして、バスマットは別のものを使用してください。
このとき注意する点は、洗った後しっかり乾かすということです。足が湿った状態はよくありません。しっかり乾かすようにしましょう。
バスマット以外にも、体を拭くバスタオルや足の裏に密着するスリッパにも気をつかう必要があります。バスタオルやスリッパも家族で共有することが多いので、水虫に感染している家族がいる場合、別のものを使うようにしましょう。
もうひとつ注意しなければいけない点は、洗いすぎは逆効果になるということです。私たちの皮膚には、細菌の侵入や繁殖を防いでくれる「常在菌」と呼ばれる菌が存在しています。一日に何度も手や足を洗いすぎると、「常在菌」まで洗い流してしまい、結果として手や足の抗菌力を落としてしまうことになるのです。
一日に何度も足を洗う方は少ないと思いますが、潔癖症の人は頻繁に手を洗う傾向があるので、白癬菌に感染すると繁殖してしまうことがあります。
また、爪の切り過ぎも要注意です。深爪すると爪と皮膚の間に白癬菌が侵入しやすくなります。爪先の白い部分が少し残る程度にしておきましょう。
白癬菌は20度以上の温度、湿度が60%を超えると活動が活発になり、反対に温度が40度以上になると活動が衰え、60度以上で死滅するといわれています。足の水虫は手の水虫の10倍以上の発生率があるそうです。そう考えると水虫対策は足のケアが重要だということです。
足は一日の大半を蒸れた状態にあるので、水虫が心配な人は、40~45度の若干熱めのお湯で足湯をすることを習慣にしてみましょう。足湯のあとは清潔なタオルで水けをとり、しっかり乾かすようにしてください。
爪水虫の感染が疑われる場合、専門医の診察を受ける必要があります。爪水虫の診察は何科で診てもらうのかわからない方もいると思いますが、基本的に皮膚科で診察、検査を受けます。
専門家といえども、診ただけで爪水虫と判断できるわけではありません。爪水虫が疑われるときは、顕微鏡を使って白癬菌の有無を調べます。爪の一部を削り顕微鏡で見るだけなので、その日のうちに結果がでます。
検査の結果白癬菌に感染していることがわかると水虫治療を行います。爪水虫の治療は、塗り薬と飲み薬で行います。
塗り薬は、白癬菌に感染した手や足の爪に薬を塗布するのですが、爪水虫は悪化してから気づくことが多いので、爪の奥深くまで白癬菌に感染している場合、そう簡単には治りません。ある程度症状が改善するには爪が生え変わるのを待つしかないのです。
爪水虫の治療の多くは、塗り薬と飲み薬を併用して行います。塗り薬は体の外から、飲み薬は内からアプローチして治療するのです。一般的に手の爪水虫の治療期間は半年ほど、足の爪水虫の治療期間は1年ほどかかるといわれています。
爪水虫の治療は、塗り薬と飲み薬が一般的ですが、その他にレーザー治療があります。レーザー治療は認可されていないので、自由診療扱いとなるため、治療費が高くなります。
白癬菌に感染した爪や皮膚にレーザーを照射して白癬菌を死滅させる治療法です。レーザーは月に1~2回照射します。4~7回行うと白癬菌を死滅させることができるといわれています。
費用はレーザー1回につき1万円前後ですから、4万~7万円かかります。飲み薬を併用すれば薬代も必要になります。
水虫と聞くと中年のおじさんの病気というイメージがあると思います。水虫は不衛生な人が感染するという先入観があり、水虫=不潔な人=おじさんという図式がなりたつわけです。しかし、実際に水虫に感染している人の割合は男性、女性ほぼ同じだといわれています。
水虫治療で皮膚科を訪れる女性もたくさんいるのです。衛生面でいえば、確かに女性は男性よりも気を付けています。しかし、こと足の衛星に関しては女性のほうが悪い環境にあります。
ファッションにこだわる女性はハイヒールやブールを履くことが多いと思います。ハイヒールを履く人は、指や爪の変形を起こす確率が上がるため、変形した爪の隙間から白癬菌が入り込のです。
また、ブーツはご存知の通りとても蒸れます。高温多湿のブーツの中は白癬菌にとって心地いい場所なのです。ハイヒールやブーツを履く女性は、爪水虫に感染しやすいことを認識して、足のケアを入念に行う必要があります。